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 奈良の大仏が建立されたのは、今から一二00年ほど前のことだが、現在の’顔’は一六九一年に作られたものである。
 顔を作ったのは山田遺安という人物で、こんな制作秘話が残されている。
 顔の制作を依頼されたものの、どんな顔にすればいいのやら思案にくれた彼は、家の前に大きなカゴで作った大仏の顔の模型を置き、隠れてアンケート調査をすることを思い立った。自分は模型の中に隠れ、道行く人がどんな感想を言うか、それをヒントにしようというわけである。
 こうして江戸時代の市井の人々の意見を取り入れて生まれたのが、現在の大仏様の顔。つまり、大仏様には特定のモデルはなく、その顔は、当時の万人から愛されるような顔にこしらえてあるというわけ。
 それまでの大仏様の顔とはずいぶん違ったらしいが、当時は、’現代風にアレンジした’とでもいわれた?

 トランプのキング、クイーン、ジャックには、モデルとなった人物がいる。誰がモデルかには諸説あるが、ここではもっともポピュラーな説を紹介してみよう。
 まずは、キングから。ダイヤのキングは、剣ではなくマサカリを持っているが、これはジュリアス.シーザーがモデル。マサカリは古代ローマの権力の象徴だった。そして、クラブはアレキサンダー大王で、スペードはダビデ王。ただひとりヒゲのないハートのキングは、西暦八00年に西ローマ帝国を再建したカール大帝がモデルだといわれる。
 クィーンは、ハートはユダヤがアッシリアに攻められたときに敵将の恋心を利用して相手を倒したといわれる伝説上のヒロイン、ユディト。ダイヤは聖書で絶世の美女とされるヤコブの妻ラケル。クラブはエリザベス一世で、スペードはギリシャ神話の戦いの女神アテナ。
 続いてジャックは、ハートはジャンヌ.ダルクと戦ったラ.イール。ダイヤとクラブはアーサー王の円卓の騎士でサー.へクター、サー.ランスロットの兄弟。スペードは、チャールズ皇帝の従兄弟のオジュール.ラ.ダンだといわれる。
 キングとクィーンは夫婦で、その息子がジャックだと思っていた人には、全員が赤の他人だということは意外だったかもしれない。

 トランプの四つのマークといえば、ハート、スペード、ダイヤ、クラブだが、この四つのマークにはそれぞれ次のような意味がある。
 トランプはタロットという占いカードが変化して生まれたものだが、タロットには僧侶の象徴である聖杯、軍人の象徴である剣、商人の象徴である貨幣、そして農民の道具である棍棒の四つのマークがある。これは、中世ヨーロッパの身分階級そのものだが、この四つのマークがそれぞれハート、スペード、ダイヤ、クラブのルーツになった。
 つまり、ハートはもともと杯の形だったのが、ハートと呼ばれるうちに心臓の形に変化した。スペードは剣の形そのもので、イタリア語の剣を意味するスパーダがその語源。ダイヤは、富の象徴であるダイヤモンドからその形をもらい、クラブは棍棒に付いていたクローバーがマークの元になった。

 何事かの秘訣集のことを「虎の巻」という。学校の教科書を解説した参考書のことも「虎の巻」という。なぜ、こんなところに密林の王者「虎」が出てくるのか。
 この言葉は、中国の古典に由来する。中国の代表的な兵法書に「六韜」という書物があり、その中の「虎韜の巻」が略されて「虎の巻」となったのだ。
 ちなみに、「六韜」には、文.武.龍.虎.豹.犬の六巻があり、「虎韜」の巻には主として戦略や用兵の奥義がまとめられている。
 日本でも、古来から「六韜」の崇拝者が多く、虎韜の巻から生まれた虎の巻という言葉が、兵法の密伝書一般を指すようになった。さらにそれが転じ、秘事、秘伝の書一般に使われるようになり、やがては教科書傍用の参考書まで指すようになったわけだ。

 ’親方日の丸’という言葉が健在なように、この国ではあいかわらず官民格差がなくならない。「雲泥の差」とは、差がひじょうにはなはだしいという意味だが、じつはこうした官民格差から生まれた言葉である。
 出典は中国の「後漢書」。その中の「矯慎伝」に、次のような説がある。
 漢の高官だった呉蒼は、矯慎という人物を高く評価し、なんとか公職についてもらおうと、次のような手紙を書いた。
 「あなたは世の中にうずもれて苦労をしている。私は’雲’に乗り(公職につき)、あなたは’泥’を行き(民間におり)、住むところが違うが、西風が吹いてくるたびに、私はあなたのことを思い、不憫になる」
 いまどきの日本、民間企業にもいろいろあるが、高級官僚とふつうのサラリーマンの退職金に雲泥の差があるのは事実である。

 「え?わたし?」と言うとき、日本人はたいてい自分の鼻を指差す。欧米人は、男なら自分の胸を親指で指し、女性なら手のひらを胸に乗せるもので、鼻を指差すというのは、日本特有のジェスチャーだが、これは、「鼻」という漢字の成立とも深い関係がある。
 その昔、鼻は「自」という字を書いた。「自」という字は「目」と「ノ」からできているが、目の前に突き出たもの、それが「自」=鼻だった。
 ところが、自分のことを指すときに、ハナを指差すことが多いため、いつしか「自」は「自分」という意味に使われるようになってしまった。
 こうなると、鼻を表わす別な漢字が必要になる。そこで、「自」の下に鼻の穴を表わす「畀」をつけて、「鼻(鼻)」という漢字が作られたというわけである。

 日本古来の夢占いでは、「一富士、ニ鷹、三茄子」が夢に現われれば、吉兆とされてきた。ちなみに、このあと四、五もあり、四は葬式、五は火事。一見、縁起が悪そうだが、夢で出会えば、実人生では出会わない、と解釈されている。
 「一富士ニ鷹三茄子」が、なぜこの順番になったかについては、諸説ある。
 第一は、いずれも徳川将軍家と関係の深い駿河の名物だという説。家康は晩年に「駿河でいちばん高いのは富士、二番目は足高(愛鷹)山。値段が高いのは初茄子だ」と語ったという。
 もうひとつの説は、いずれも仇討ちに関係があるというもので、曽我兄弟の仇討ちは富士の裾野、忠臣蔵では赤穂浪士の紋所が鷹の羽だった。そして、荒木又右衛門、渡辺数馬の伊賀越えの仇討ちは、その場所が茄子の名産地だった。
 また、単純に、富士は日本一の山であり、鷹は強い鳥、茄子は物事が「成す」にひっかけたものだともいう。

 昔から「福耳」、つまり耳たぶが大きかったり、ふっくらしている人はお金持ちになるといわれるが、これはどうしてか?
 もちろん、迷信にすぎないが、その由来は、福助人形と七福神にあるようだ。
 足袋メーカーのトレードマークにもなっている福助人形は、幸福を招くという縁起物の人形で、耳たぶが大きいのが特徴。七福神では、恵比須をはじめ、大黒天、福禄寿、布袋と、耳たぶが大きく描かれている。
 こうしたおめでたい人形や神様のおかげで、大きな耳たぶ=福耳ということになったのである。

 昔の人は、空や雲の様子、風の向きなどから、天候を予測した。その中には、現代気象学にてらしても、相当の確率で的中するとみられるものがある。
 「煙が西になびけば雨、東になびけば晴れ」というのは、その代表格。この言葉は、言い換えれば「東風が吹けば雨、西風は晴れ」といっているわけだが、日本のような中緯度の地域では、たしかに気候は西から東へと変化する。今日関西が雨なら、翌日は関東が雨という具合である。そして、東風が吹いて煙が西に流れるときは、西から低気圧が近づいている証拠といえ、逆に東に流れるのは低気圧が通過していったことを意味すると考えられる。
 同様の意味で、「西方に黒雲起こるは雨」西の山が晴れていたら天気はよい」など、西方の空の様子から翌日の天気を予測する言い伝えは数多い。
 「夕焼けは晴れ、朝焼けは雨」というのも、かなりの高確率が期待できる予想法。夕焼けは西の空に起きる現象であり、美しい夕焼けは西の空一帯が晴天域であることの証拠だ。

 「昆布を食べると、髪の毛が生える」といわれる。
 実際、昆布をはじめとした海藻類は、ビタミンやヨードなど、現代人に不足しがちな物質を豊富に含み、貧血の防止、ぜんそく、動脈硬化にも効き目が大だ。毎日でも食卓に並べたい食品のひとつである。
 しかし、さすがの昆布も、髪の毛を増やすことはできない。海藻に含まれているヨードは、髪の毛に必要な成分ではあるが、それで髪が生えてくるわけではないのだ。
 また、昆布を食べると「髪の毛が黒くなる」ともいわれるが、こちらも期待薄である。昆布には、髪の毛の色素であるメラニン色素を増やす物質は含まれていない。
 これらの言い伝えが生まれたのは、昆布の色からの単純な連想だろう。あの黒々とした色にあやかりたいという人たちが言いだしたものと想像される。

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